賢者の日記

賢者の日記

齢20と幾年、穴から出られなくなった山椒魚が思った事を記す。

エンジェル

 先天的にお姉ちゃん子気質を持つ私はお姉ちゃん研究家という履歴書には書けない肩書を持つ。生き別れた姉を名乗る女性が現れてくれまいかと、眠れぬ夜をいくつ越してきたか知れない。

 もはや多くは望まない。高望みはしない。

 背が高く、深い知性と底知れぬ包容力を具え持ち、触れると優しいにおいのする美女(義姉だとなお可)。

 そんな人が現れれば、私は笑顔に溢れる余生を送れるに違いない。

 

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筆者の近影(日清食品:作「シスコーンBIG」)

 

 私が非業の宿命を知る際は以下の手順を踏む。

 ある日私が炬燵で温まっていると、ふいに美女の訪問がある。狼狽する私は誰何する。すると美女はハッと顔を上げる。私も驚く。彼女の目はわらび餅のように透明な涙をふるふる震わせているのである。

「あぁ、その声は……お慕いしておりました」

 顔をいくら見つめても、私は彼女の正体に気づけない(義姉だから)。

「あぁ……坊ちゃん……」

「一体何なのですか」

 動転する私は非道いことを口にしてしまうだろう。突き放すかもしれない。だが、美女はまるで自分が悪いとでも言うような顔をしている(底知れぬ包容力)。

「誰ですか!」

 私は問いただす。

 美女はなかなか答えない。適当な言葉を一つ一つ吟味している様子だ(深い知性)。やがて口を開いた彼女は、はたして自ら出生を語るのである。

「アイアムユア…ネエチャン」

「嘘だああああ(やったー)🤗」

 

 そんなことを、病院の個室で考えていた。今日は母の検査入院だった。私は背後から、看護師のお姉さんに手を添えられ進む母を羨望の眼差しで見つめていた。

 そんな様子に何を勘違いしたのか、母は後になって「あの子は今年大学を出る子で、4月からここで働くみたいね」と言った。「初々しくていい子よ」

 私は一人、猛った。

 母さん、俺が欲しいのは恋人じゃなくてネエチャンなの!週刊ジャンプ月刊ジャンプの違いと一緒なの!(ToLOVEるがあるかないか)