銭湯の不文律
銭湯のマナーとは何か。
タオルをつけない
体洗ってから入浴する
不用意に騒がない
これは銭湯の文化が生まれた鎌倉時代より語り継がれる鉄の掟である。
私はその昔、この掟を破りはしゃぎにはしゃいだ結果他人のシェーバーを破壊し、激昂した所有者に危うく舞鶴港に沈められそうになった。とんだ露天風呂だ。身体が瞬時に冷えた。尋常じゃなく怒鳴り散らしたこのおじさんは、京都に潜む「その筋の人」だったのである。これは銭湯の掟を犯した私に落ち度があろう。
銭湯の掟については前述の通りである。
だが主戦場を旅先の銭湯とする場合に限り、守るべきもう一つの不文律が存在する。
それは
「貸切なら大いにはしゃいじゃお☆」
ということである。(独創性あれば尚よし)
泊まったホテルの大浴場が貸切状態状態であったため、
私はこの隠れた4つ目の掟を守るべく、のびのびはしゃいだ。
いえええええええええええええええええああああ
脱衣場で肉の体を自撮りし、電子工学の粋を駆使して(ほとんど濫用と言って良い)現実に闘いを挑み筋肉的詐称を実現させ、
浴室では入念に頭と身体を洗った後あらためて身体を洗いなおすという贅沢の限りを尽くし、
浴槽に入るや否や手足を円周軌道いっぱいに動かしてダヴィンチ的作図を試み、自らの肉体が黄金比に基づくものであると確証を得たふりをした。
また、エクソシストのように体をブリッヂさせ下半身の一部分を浮上させ、将来訪れるべきムスコと裸の付き合いを予習し、両足を器用にバタつかせシンクロごっこに勤しみ(顔は死んでも湯につけない)、
脱衣場に出てなお清拭用タオルで古代ギリシア人ごっこに興じた。
大変のびのびできておおいに結構!
私は言う。
しかし、ここまで書いて、私は一つの事実に思い至ったのである。
どうやらオリジナリティのかけらもないぞ!