1月19日のブルース
人手が足りないという話を耳にする。辞める分はどんどん辞めて、一方で入ってくる人間が居ない。
足りない分は外国人を横滑りさせるとして、ではその浮いた人間はどこへ行ったのかというと、海外のホワイト企業へ出たり理想の条件を求めて職安に出たり、怖くて家から出てこなかったり、生まれてきてなかったりしているらしい。そういう訳で労働者確保が難しくなっていて、それ故に退職者の発生は是が非でも防がねばならない。
若い人間がなぜ退職するかというと、労働条件の悪さはもう論外として、働いていて自身の成長に結びつかないと感じるためであり、だから若い社員には積極的に資格取得の支援をしたり、研修に行かせて学ばせたりしなければならない。そんなことを複数のコンサルから聞いた。(個人的にはこの見解は微妙かなと思っていて、もっと根深いところ、SNSなどで同世代と自分を比較する癖がついているからだと思っている。体感する以上にSNSの功罪は大きい)
社長の頭にその言葉が残っていたのか、山椒魚含む若手社員は研修参加のため、全国に一斉に吹っ飛ばされた。私に課せられた特務は、今後展開される社内研修の参考、早い話がコンサルの孫引きである。
「とりあえず内容と構成と、話し方をノートに書き殴ればよかろうもん」
「参加者は10〜20人が一般だろうから、最前列とも最後列とも何とも言えないラインに席取って顔を伏せていれば安全だろう」
究極的緊張しいの私にとって席次は超重要で、以前最後列に座ったがために偏屈講師が私を当てに当てたことがあった。極度の緊張でひとつとして満足に解答も出来ず、あれには閉口した。
過去の研修で得た知識を実践し(ロクな事を学んでない)、私は会場の戸を引いた。六畳ほどの空間に丸い机と椅子6脚がでんと構えていた。
狭い。これは前も後ろもあったものではない。うち4脚は席が埋まっていて、そして何故か皆後ろから詰めて座っているので、自然私は最前列に着地するかたちとなった。
暫くして講師が入って来て、全員と名刺交換を済ませ、私以外全員役員レベルで、あろうことか最後講師から「おや、君は病院かね!」と興味を持たれた。スタート早々、嫌な予感がした。
嫌な予感は当たるものだ。
「君の病院の来期の予算は〜」
「君の病院の離職率は〜」
「売上は〜」
何故かコイツは私を執拗に狙うのである。重ねていうが私はヒラ社員で、本当に聞くべき社長は他全員がそうなのに、絶対に私以外に話を振らない。
私が所謂「良回答」をするからと考えるのは甘い考えと言わざるを得ない。緊張しいと言ったではないか。私は財務三表でしくじり(経理課)、一桁の掛け算をしくじり(28歳)、法人理念暗唱でしくじった(入社5年目)。どれも平生の私なら造作もないことで、それ故に悔しかった。
私はこの経験を社内研修に生かそうと思う。
それがコンサルのやり方ならそれに従い、私のような地獄を味わってもらう。
ヤツのコンサルは二度と受けないと誓った。