1月26日のブルース
朝、眼鏡を洗浄してもらう為だけに眼鏡市場に行く。店員さんが朝から相変わらずの色気を振りまいていた。あの妙な色気の答えは香水にあると個人的には睨んでいる。
帰り道、お爺さまから話しかけられる。「暖冬だから近く地震が来る」と歯のない口から熱弁を吐かれておった。科学的根拠はついに詳らかにされなかった。
昼、ブックオフにて『七つの習慣』を2冊買う。本家と漫画版である。そのまま図書館へ行き、『漫画版七つの習慣』を読む。
ジムに行く。若い人が増えてきた気がする。なんか臭いなと思っていたら、家に帰って判明。レッグプレスで踏ん張ったときに……。
予定を変更してシャワーを浴びる。お尻を入念に洗う。
喫茶店でお座なりにしていたシナセンの課題に手をつける。ショッキングピンクのPCが公序良俗を犯していた気がするが気にしない。
家に帰り、明日の昼ごはんを作る。
「予定が目白押しでしたね」
秘書の大山椒魚のメスが言い、黒いバインダーをぱたんと閉じた。
私は得意げに鼻をふんすと鳴らした。
「ふんす」
「お尻は大丈夫でしたか」
「少量だし、まぁ……」
「言ったでしょう、外へ出れば人は自然と成長するのです」
大山椒魚のメスの言葉に私は今一度鼻を鳴らす。
「だが、今日だけで1ヶ月分のMPを消費してしまった。しばらくは寝ていなければ身体がもた」
「そうは行きません」
大山椒魚のメスはバインダーをぶんぶん振った。「成長に終わりはないのですよ」
すると、大山椒魚のメスは床に目を落とし、落ちていたスマホを取り上げた。
私は語気を強めて抗議した。
「えぇ……秘書でもそれはちょっと」
「なんですかこれは! 何らの有益なアプリも入っていません。端末は有能でも使用者がこれでは」
大山椒魚のメスは両手でスマホをぽちぽちした。大山椒魚のメスは両手持ち派であることが予期せず判明した。
「ああっ、こら何する」
大山椒魚のメスはスマホを親指と人差し指で摘んで、それから放り投げた。
「雑誌、音楽、ポッドキャストです。これからは通勤時間を勉強に当てましょう。同世代につけられた遅れを取り戻すのです」
「いやはやこれはしんどくなるぞ」
向こう一年の模様が脳裏に浮かんだ私であった。