怪人、南氏についての報告
職場の先輩、南氏について報告する。
南氏は私より5年ほど先輩で、田舎で両親と実家暮らしをしている。こちらへ入社する前よりお嫁さんを貰っていて、保育園に通う子供が1人いる。
その奥さんが第二子を身籠り、両親と相談した結果、入院する運びとなったのは昨年末のことである。それに連動するように長子が風邪を引いてしまったため、南氏は暫く病院と会社を往復する生活を送ることとなった。
このような苦労人となった南氏に対し、周囲の人間はおおむね温かい目で見守った。しかし残念なことに悪い噂を流す者もいた。
「南氏が両親と結託して嫁と子供を病院送りにしたらしい」
「氏が足繁く通うのは、病院から逃走するのを見張っているに違いない」
「見よ、氏の左手薬指には銀色のメリケンサックがはめられているではないか」
誤解を生むよう恣意的に操作されたこのような噂を誰が流したか。
モチロンわたしである。