賢者の日記

賢者の日記

齢20と幾年、穴から出られなくなった山椒魚が思った事を記す。

1月8日のブルース

 今日の朝刊に私についての記事が躍り出た。各紙一様にこの事件を取り上げたが、この場では、就中雄弁だった次の二紙を取り上げることにする。

 

【悲報】山椒魚氏、失墜する

 A社に勤める山椒魚氏(28)が、社長勅命の仕事四件のうち三件で失敗、社長の強い叱責を受けた。氏はかねてより社長の寵愛を受けていた。

 社長は報道陣に対し「らしくない。(依頼した仕事は)パートでもできる簡単な仕事だった。期待を裏切られた気分」と述べた。さらに今月有給申請をしていた事に話が及ぶと「(水曜日は)会議の多い日。その日を休むのは言語道断と言うほかない。仕事に対するモチベーション低下の現れ」と切り捨てた。

 これに対して山椒魚氏は「完全な怠慢。気が緩んでいた。猛省している」と、記者に対し言葉を詰まらせながらも自身の心境を語った。

ーー毎年新聞三面より

 

山椒魚、失敗ーー社長の声が事務所をこだま

「昼休みで外に出たら鬼電が入っていて吃驚しました」

 そう語るのは今年入社5年目を迎える山椒魚氏(28)。彼はその日、社長命令だった案件で、失敗を何度か犯してしまったのだと言う。

 氏はその原因について次のように分析した。

「正直、正月ボケがあったのかもしれない。正月休みは2日しかなかったが。それか、簡単な雑務と見くびっていたか」

 取材に応じる山椒魚氏はどこか挙動不審で、当日のトラウマが影響しているものと思われた。記者が日本酒を差し出すと、言葉を選びながらも内に潜める本音を少しずつ吐露していった。

「だいたい失敗したと言っても、たかが社内の資料掲載ごときで、それであそこまで怒鳴られるのはおかしい。狂ってる。病気ではないか。

 俺がそう言うと仕事を差別しているとか言い訳するなと言ってくるのだから呆れる。後出しジャンケンもいい加減にしろよ」

 今後の活動について尋ねると、

「(失敗したものは)しゃーない。次の業務に切り替えていく」

と明るい側面を見せる山椒魚氏であった。

ーー朝寝坊新聞三面(地域情報欄)より