京都怪談
大学を留年したから、京都には5年間住んでいたことになる。
多くの学生がそうであるように、私の学生生活は大した成すべきことも、また成さねばならぬこともなく、
私はその殆どを何も考えずただ生きていた様なもので、社会人となった今では気楽だった昔に戻りたいような、当時は当時なりに苦しかったような、茫々たる5年間だった。
京都で過ごしたその5年のあいだに、言葉で説明できない不思議な出来事に2度遭遇した。
それぞれが互いに関連しているようなしてないような、暗い海に漂う漁火のようなふたつの記憶は、私の曖昧な大脳の底に沈んで思い出されることもなく、そうかと思うと今の時期のような肌寒い夜に唐突に浮かんでくることもあって、結局今に至るまで忘れることが出来ないでいる。
どちらも荒唐無稽という点で人に話すのが躊躇われるような、話したところでまず信じてもらえない出来事だけれども、当ブログのような読む人の少ない場では障り無いと思われるから、書いてみることにした。
一部で、これは創作だ、と指摘される方も居るかもしれないが、そうした方には多くは望まないから、これは強引なこじつけに違いない、くらいの認識に和らげておいた方がお互いの為になるよと提案するものである。
これから話すのは、私が大学五回年目を迎えた秋の、夜のはなしである。